日本語教師に興味があるけど、向いているかどうか分からない。
そんな疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
今回は、日本語教師に必要な資質について紹介します。
日本語教師に向いている人
私が考える日本語教師に向いている人とは、次の4つです。
- 日本語の細かい違いに気がつける人
- 学習者の気持ちが感じ取れる人
- 学ぶことが好きな人
- 日本語が好きな人
日本語の細かい違いに気がつける人
普段使っている日本語には、細かい違いがたくさんあります。
私たちは無意識の中で、似ている文や言葉を使い分けて話しています。
例えば、
①田中さんにカバンを持ってもらいました。
②田中さんがカバンを持ってくれました。
という2つの文があります。
皆さんはこの2つがどのように違うか、説明できますか?
①は、私が田中さんに依頼して、田中さんがカバンを持ったという意味合いが強くなります。
②は、田中さんが自発的に私のカバンを持ったという意味合いが強くなります。
同じような文ではありますが、私たちは使い分けを行ってるのです。
こんな細かい違いを、授業で外国人に教える必要があります。
ですから、普段から、同じような意味、文でもなぜ違うのかというのを意識的に考えることが必要です。
他にも、「気持ちがいい」と「気分がいい」など、外国人は使い分けに苦戦します。
何が違うのか、どう違うのか、また日本語がわからない外国人に、少ない語彙を使ってどう教えていくのかを常に考える力が必要です。
学習者の気持ちが感じ取れる人
皆さんは、外国語をその外国語で学んだことがありますか?
例えば、英語を英語で学ぶというような経験です。
日本語教育は、基本、直接法というメソッドを使って教えます。
直接法というのは、今学んでいる言語以外の言葉を使わずに教える教授法です。
特に、日本での日本語教育は、一つの教室に、たくさんの国の学生がいるので、一つの媒介語を使って説明するということはできません。
そこで、初めの質問です。
皆さんは外国語を学ぶという経験の中で、目標言語のみを使って学んだ経験はありますか?
全くの知識のない学習者が、その言語だけを聞き学んでいくというのは、非常に難しいものです。
学習者は今までの人生経験で、このような場面ではどんな話をするのか想像力を働かせ、一つ一つを理解していく必要があります。
ですから教師に必要なのは、わかりやすい教案作成と様々な教材を用い、できるだけ説明中心の授業ではなく、絵を見せ表情を見せ授業を進めていく必要があります。
直接法で学ぶということはどんなことなのかを想像できる教師にならなければなりません。
学ぶことが好きな人
教師は、生徒以上に常に学び続ける必要があります。
教師だからなんでも知っているなんてことはありません。
教師で一番ダメなのは、昔の成功に執着して化石化してしまうことです。
常に新しい教材や教科書に目を通し、新しいことに挑戦していく姿勢が求められます。
日本語教師は、悪く言えば誰でもなれる職業です。
「先生」と呼ばれることに快感を覚え、そこで止まってしまう先生方を何人も見てきました。
残念な先生にならない意識を持ち、常に学び続けることができる精神力が必要になります。
日本語が好きな人
最後に、日本語が好きな人、これが一番重要になります。
テレビや雑誌、youtubeでどんな話し方や言葉の使い方がされているのか、無意識の時間でも意識できる人。
シャワーを浴びながら、ふと言葉の違いを考えてみたりする人。
そんな人は、日本語の世界にどっぷり浸かっていると思います。
助詞の違いでも、「うわぁぁ」と頭がおかしくなってしまうくらい考え込んでしまうこともありますが、それでも考え続けられる力があれば、大丈夫です。
そこまで必要とされない能力
そこまで必要とされない能力は、「国語力」、「英語力」、「スピーチ力」です。
国語力
日本語教師はもちろん国語力はあるに越したことはありません。
ただし、国語と日本語教育は全く異なるものと考えてもいいかもしれません。
特に、初級や中級レベルの人たちに教える先生方には国語力はほとんど必要ありません。
国語には、「次の文を読んで、作者の心情を答えよ。」というような問題が出てきますが、日本語学習者の初級、中級レベルの学生にはそのような問題は全く関係がないからです。
日本語教育では、日本語を体系的に捉え、語順や、語彙の意味、発音を正確に教える知識が必要になります。
あ、漢字力はもちろん必要です。
日本語教師歴が長くなると、簡単な漢字ばかりを使うことに慣れ、どんどん漢字を忘れていってしまう傾向がありますから、日々、忘れないように勉強が必要です。
中国人に教える時は、漢字を知らないということで、信用されない教師になる可能性もありますよ。
英語力
日本語教師あるあるですが、日本語教師というと、「英語が話せるの?」と聞かれる割合が高いです。
先ほども書きましたが、日本語教育は直接法というメソッドを使って教えることが多く、日本語ができれば大丈夫です。
もちろん、日本語以外の言語が話せるのであれば、それに越したことはありません。
海外で教えるのであれば、その国の言語を使えれば、万が一学生がわからないという反応を示したときに、媒介語を使って説明することもできますね。
媒介語を使うことで、学習者のストレスも減るので、場合によっては必要になることもあります。
私もメキシコで教え始めた頃は、スペイン語がわからず、学生がソワソワしているのを感じることがありましたが、少しスペイン語がわかるようになると、スペイン語でも説明ができるようになり、授業も進めやすくなりました。
日本で教える場合は、いろいろな国の学生がいますので、全員が分かる言語を媒介語として使えればいいのですが、なかなかうまくはいきません。
ですから、英語力はそれほど必要ではないのです。
英語力よりも、学習者に合わせた言語が少しわかったほうが効果的ですね。
スピーチ力
人前で話す力はさほど必要ではありません。
初級、中級に教える日本語教師は、説明をガンガンしていくだけでは学生は理解できないからです。
学生の既習語彙を使い、質問をし、学習者の反応を見て、新しいことを導入する
この流れを掴めば、大丈夫。
たくさん話す必要などないんです。
ただ、声が小さい人、コミュニケーション能力がない人は難しいかもしれませんね。
まとめ
今日は、日本語教師に向いている人について説明しました。
学習者の反応を見て、独りよがりの授業にならないこと。
細かい違いに気がつけること。
そして、どんなに忙しくても、学習者の笑顔や成長を心から喜べる人。
そんな先生が増えていってくれればと思います。